ブルーフラッグ取得までのプロセス

「かつては地元住民が安心して遊ぶことのできた海水浴場」

片瀬西浜・鵠沼海水浴場は、湘南の観光スポット・江の島からほど近く、西に富士山も望める恵まれた環境ということもあり、かつては海水浴場のメッカとして、湘南はもとより全国にその名を知られていました。もちろん地域住民や近郊の家族連れが多く訪れ、地元に愛される海水浴場でもありました。

「治安の悪化、海離れの影響によるレジャー人口の減少」

ところが時代とともに状況は一変していきます。若者のビーチカルチャー発信地としても一目置かれていた、湘南海岸のクラブ化問題です。

2000年を過ぎたころから飲酒や喫煙、深夜まで鳴り響く音楽などを理由に地域住民の皆さんからの苦情が増え、それに比例するようにビーチマナーや治安が悪化していくことに…。

風紀の乱れなどから規制ルールを設けざるを得なくなるものの、鎌倉市などの市の条例とは異なり藤沢市はあくまで組合による自主規制止まり。「音楽の全面禁止」「入れ墨の露出を控える」などなどのルールを打ち出すものの相対効果があまり望めず、近隣の海水浴場に人が流れていくのを止める術がない状況が続き、近年では同海水浴場の来場者はピーク時の350万人から100万人にまで減少していました。

「ブルーフラッグ認定取得でクリーン&安全なビーチへ」

そんな時、2016年に国内初のブルーフラッグ認証取得を果たした由比ガ浜茶亭組合の増田組合長に江の島海岸の海離れについて相談させていただく機会があり、ビーチのブルーフラッグ取得推進をスローガンに掲げる「NPO法人湘南ビジョン研究所」の片山清宏理事長をご紹介いただきました。

由比ガ浜海岸がそうであったように、ブルーフラッグ認証取得のための4つの条件、33の基準をクリアすることで世界基準のキレイで安心なビーチとなり、かつてのクリーンなイメージを取り戻すことにつながるのではないか? また、片山理事長が同組合の理事長・森井と出身校が同じということもあり、湘南の海を守り、次世代に引き継いでいきたいという強い想いにお互い共感。2019年末には、民間団体初のビーチフラッグ認定取得に向けて動き出すこととなりました。

「国内初となる民間団体での認定取得へ」

それまでは海の家ごとに有志で行っていたビーチクリーンを組合として毎週実施。2020年はコロナ禍で海水浴場の開設は断念されましたが、藤沢市夏期海岸対策協議会による「夏期海岸藤沢モデル2020」策定で、市の観光シティプロモーション課をはじめ神奈川県ライフセーバー協会、多くの関係機関と協力しながら安全・安心な海岸を目指してきました。組合としても、海の家は開設されませんでしたが、トラブル防止や安全確認の注意喚起をかねてオーナーたちによる平日パトロールも朝と夜の計4回行ってまいりました。

それらと並行して、認証取得に必要となる水質、バリアフリー(環境マネジメント)、安心安全、環境教育と情報の4分野33項目の基準を満たすべくビーチの見直しを行い、市の協力を得ながらおよそ300ページにわたる申請書を作成。11月に国際NGO「FEE(国際環境教育基金)」に国際認証取得を申請し、2月に国内審査委員会の承認を得て、2021年4月●日、民間団体としては国内初となるブルーフラッグ認定取得となりました。

「再び地域で愛される海水浴場に」

行政や企業、環境・観光団地、漁業関係者、マリンスポーツ関係者、ライフセーバー、市民の方々など携わっていただいた人々の共通の願いは、湘南の海がいつまでも安全で誰もが安心して利用できるものであってほしいというものではないでしょうか。今回の認定取得で終わることなく、これからも湘南の海を守り、次世代にバトンをつないでいくためにも、更なる改善や未来への投資など努力を惜しまずに取り組んでいきたいと考えております。